今週、少し業界?で話題になった標記爆破に関し、情報は限られていますがこちらの記事について若干の考察を。まず、米軍という軍隊が対応をしたということで、緊張感が出てくると思いますが、軍が対応をすることそれ自体は全く問題ありません。海軍と海上警察機関の関係などは国によって様々で(海洋法【611】)、海上警察活動を軍が担うことも珍しくありません。他方で、軍隊が対応したからといって、直ちに武力紛争が開始して武力紛争法が適用されるわけではなく、この事案において武力紛争の存在が確認される可能性はかなり低いと思われます(海洋法【618・624】)。そのため、記事でも指摘されるように、国際人権法や海洋法の違反が想定され得ます。あと、米国の場合はその前に憲法で保障する人権の侵害を構成し得る気もし…。海洋法の観点からは、合理性の原則が適用され(海洋法【576】)、それによれば、人命を奪うような措置は必要最小限度にしなければいけません。今回、本当に爆破する必要があったのか。それをしっかり証明できない限り、米国の措置は海洋法に違反する可能性が高いと思われます。フィリピンのドゥテルテ前大統領は、自国内の麻薬撲滅のために行った措置が超法規的殺害として批判され、ICCで訴追されるに至ります。トランプ政権の今回の対応は、海上であるが故に、誤射等の可能性は低くなるかもしれませんが、裁判をせずに処刑、といった意味では類似のものと評価できます。