中国によるブイの設置・撤去について

中国が日本のEEZに設置していたブイを撤去したことが報道されていますが、その中では、日本のEEZ内において、中国が海洋法条約に違反する形で調査活動を行っている、という説明もあると思います。ただ、これはあくまでも日本の立場からの説明と言えます。正確な座標は把握してませんが、こちらの記事、のイメージだと、中国の大陸からですら200海里以内にあるように見えます。そのため、問題となる水域は、日本と中国、両国のEEZへの権原(entitlement)が重複し、境界を画定する必要のある未画定水域と思われます(『海洋法』【229】)。そうなると、第三者的には、中国によるブイの設置は、未画定水域で起きた問題であり、まず、両国が未画定水域において負う義務に違反しないか否かが問題となります(『海洋法』【250】)。先例に照らせば、未画定水域で一方の国が海底資源を一方的に開発した場合などは、海洋法条約違反となる可能性が高いですが、今回のような調査活動のみで違反になる可能性はそこまで高くないように思います(『海洋法』【253】)。また、日本のEEZで行われていたとしても、沿岸国の同意が必要とされるのは、海洋科学調査(MSR)と呼ばれる調査活動のみで(『海洋法』【508】)、他の調査活動(例えば、軍事調査)には必ずしも同意が必要とされるわけではなく、MSRと軍事調査の峻別は容易ではありません。MSRでない場合にも、中国が、非沿岸国として沿岸国たる日本に妥当な考慮を払っていない、という主張は可能です(『海洋法』【327】)。境界が未画定でも、沿岸国政府は自国の法に基づいてEEZと制定した水域(日本の場合は、中間線までを日本のEEZとしています。)を自国EEZとして主張せざるを得ない部分がありますが、国民は、未画定水域であることを理解して冷静に見ることも重要かと思います。